
西欧の文学・哲学・歴史等の研究に携わる研究者にとって、コンピュータ上で、 英・独・仏・西・伊などのヨーロッパ諸言語に加えて、ギリシア語、 特に古典ギリシア語を使いたい、という願望は、 「悲願」ともいうべきものではないでしょうか。 かく言う私(水落)もそのひとりで、コンピュータを使いはじめて15年余り、 様々な試行錯誤を続けてきました。
ここに皆様に提供するのは、マルチリンガルエディタ Emacs-20 上で、 ヨーロッパ諸言語、日本語、古典ギリシア語を《混在して》 使用可能にする環境を構築するパッケージです。 この環境においては、 ギリシア語を含む様々な言語の混在テキストの入出力はもちろん、 TeX での印刷、TLG (Thesaurus Linguae Graecae) 形式のテキストの活用なども容易に可能となるので、 ギリシア語で苦労してこられた研究者諸氏の役に立つものと確信しております。
このパッケージを作るきっかけとなったのは、 京都大学に関わる古代・中世哲学の研究者が参加していた Nifty-Serve の Home Party でした。 そこでは、ギリシア語やラテン語の電子テキストのことなど、 コンピュータによる古典語処理の問題があれこれ議論されていたのですが、 ふとしたきっかけで、Mule (Emacs-20 の前身) の存在を知った水落が、 その開発者のひとりである 高橋直人 氏 (通産省工業技術院電子技術総合研究所) とメールのやりとりをするようになり、 電総研に「Mule古典ギリシア語環境構築のためのメーリングリスト」 が開設されました。1996年6月のことです。
このメーリングリストで、Home Party に参加していた幾人かのメンバーと高橋氏との間で様々なやりとりがなされ、 高橋氏が、私たち研究者の要求に応ずる形で 「古典ギリシア語環境」の基礎部分を作ってくださいました。 これが本環境のプロトバージョンとなりました。
その後、 鎌田雅年 氏が、 Yannis ギリシア語 TeX パッケージ (Emacs-20 では残念ながら現在未対応) のバグフィックスをしてくださったり、 水落が、IbyGreek ギリシア語 TeX パッケージのサポートルーティンや、 TLG (Thesaurus Linguae Graecae) 形式データのコンバートプログラムを書いたりして、 ほぼ現在の環境ができたわけです。
現在、このプロジェクトでは、 将来に向けて二つの課題を実現して行こうとしています。
というわけで、この「古典ギリシア語環境」は、現在もなお発展中です。 このパッケージをお使いになって、 「ここをこうした方が良い」という要望などありましたら 是非お寄せください 。 また、メーリングリストに加わって下さる方も大歓迎です。 (プログラムが書けなくても全く構いません。)
いずれにせよ、本パッケージが、古典語に関わる方々に何らかの形でお役に立ち、 コンピュータでギリシア語を扱うための環境が整えられて行くことを願っています。